結婚や育児、転勤、介護など、退職理由にはさまざまなものがあります。
しかし中には、やむおえず会社を辞める状況に追い込まれている人もいます。
\例えば・・・/
- 会社でパワハラ/セクハラに合っている
- 会社が原因で体調を崩し、働けない状態にある
- 給与や労働時間が契約内容と違うブラック会社である
これらのような、自分ではどうしようもないことが原因で仕事を辞める人・辞めざるを得ない人の割合も多くいます。
退職には「会社都合退職」と「自己都合退職」の2種類がありますが、それぞれ失業給付金(失業保険)の支給開始日や給付日数に違いがあったり、受け取れる手当が違うことをご存知でしょうか?
今回は、「労働環境が悪く仕事を続けられない・辞めざるを得ない場合」には、どういった選択をすれば退職で損をしないかを紹介します。
まずは、「会社都合退職」と「自己都合退職」について見ていきましょう。
Contents
会社都合退職と自己都合退職の違い
退職にはさまざまな理由がありますが、退職原因によっては、「会社都合退職」と「自己都合退職」の2つに大きく分かれてきます。
会社都合退職とは?
会社都合退職とは、会社側が経営不振によるリストラ、倒産などを理由に一方的に労働契約を解除し、労働者に退職を余儀なくさせることを指します。
加えて、職場の上司や同僚等からパワハラやセクハラなど、何らかのハラスメントの被害を受けた場合や、勤務地移転に伴い通勤が困難になった場合、契約締結時とは異なった労働条件や給与で働かされているケースなどにも当てはまります。
\会社都合退職になるケース/
- 会社の倒産(破産、民事再生、会社更生、手形取引の停止等)
- 事業所の廃止
- 事業所単位で1カ月に30人以上の離職予定、もしくは会社の3分の1を超える人の離職
- 解雇(違反・違法行為などを起こした際の懲戒解雇は自己都合退職扱い)
- 職場の上司・同僚等から、いじめや嫌がらせを受けた
- 勤務場所や勤務時間、給与・職種などが労働契約締結時に明示されたものと著しく違っていた
- 賃金が大幅に減らされた又は未払いが続いた
- 会社から、退職するように促される“退職勧奨”を受けた
(早期退職優遇制度等に応募して離職した場合は含まれません) - 当該労働契約が更新されない事態になってしまった
自己都合退職とは?
一般的には、多くの退職が自己都合退職に当てはまります。
労働者側が結婚や妊娠、出産、転居、家庭の都合などを理由に、自分の意思や都合で退職を申し出ることを指します。
同じ退職でも、会社都合と自己都合では、失業保険の取り扱いが変わってきます。
また、「会社都合退職」の場合は、転職の際に採用担当者にマイナスな印象を与える場合もあります。
会社都合退職と自己都合退職のメリット・デメリットや条件などを正しく理解しておくことが、損しない退職にもつながります。
会社都合退職のメリット・デメリット
会社都合退職のメリット
1.失業手当を早く、長くもらえる
会社都合退職のメリットは、自己都合退職に比べて「失業給付金(失業手当)を受けるまでが早い」ことです。
自己都合退職の場合、ハローワークに離職票を提出後、待機期間7日+3カ月を経るまで失業給付金を受け取ることができない給付制限があります。
一方で、会社都合退職の場合は給付制限がなく、待機期間7日間+約1カ月後に第1回目の支給を受け取ることができます。
また、給付日数が長いことも、会社都合退職のメリットです。
雇用保険の被保険者期間や年齢によって異なりますが、自己都合退職の給付日数90~150日に比べて、会社都合退職の給付日数は90~330日と長く設定されています。
≫ 【社労士監修】失業手当受給の流れや条件は? 雇用保険の諸手続き解説
2.会社から「解雇予告手当」を受け取れる
加えて、会社都合退職では、「解雇予告手当」を受け取れる場合もあります。
一般的に、自己都合退職の場合は、退職まで働いた分の賃金や退職金以外が支払われることはありません。
しかし、会社都合の解雇の場合には、会社側は労働者に対して離職日の30日以上前に解雇を予告する義務があり、その予告がなかった場合、従業員は会社から30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として受け取ることができます。
例えば、何の予告もなく即日の解雇を通告された際には、給与30日分以上が支給され、10日後の解雇を予告された際には、10日分を差し引いた給与20日分以上が支給されるというわけです。
会社都合退職のデメリット
一方、会社都合退職のデメリットは、転職活動において不利になる場合があることです。
履歴書に「会社都合による退職」と記載があった場合、採用担当者や面接官からその理由について質問を多く受ける可能性があります。
「会社の倒産」など自身が理由でない場合は追及されることはありませんが、例えばその理由が「解雇」となると、個人の業績不振や就労態度の問題、人間関係上のトラブルなどがあったのではないかと質問を受けるでしょう。
自己都合退職のメリット・デメリット
自己都合退職のメリット
自己都合退職の場合、履歴書の退職理由は「一身上の都合」として記載するだけで問題ありません。
そのため、転職活動において、転職回数が極端に多い・在職期間が極端に短いといったことがない限りは、退職理由を深く追及されることはないと考えて良いでしょう。
上記にも記載しましたが、会社都合退職の場合は履歴書に「会社都合による退職」と経歴上にも残ってしまうため、理由によっては面接官にマイナスなイメージを与えることがあります。
自己都合退職のデメリット
会社都合退職とはちがい、失業給付金の支給を受けるまで、3ヶ月の「給付制限」があります。
加えて、ハローワークへの申請を経て最低でも待機期間として7日間は待つ必要があるため、早くて「3ヶ月と7日後」からの支給となります。
また、会社都合退職よりももらえる額は少なく、給付期間も短くなります。
なかには「失業給付手当をすぐにもらいたい」という目的だけで、会社側にさまざまな理由をつけて会社都合退職にしようとする人もいますが、転職活動への影響を考えると、あまりよいことではありません。
「会社都合退職」の文字は経歴に残ってしまうことを覚えておきましょう。
自己都合で退職しても、会社都合にできる!?
自己都合で退職した場合えでも、「会社都合に値する正当な理由があった」ことが認められれば、やむを得ず自己都合として退職した後でも、ハローワークが会社都合と認めるケースがあります。
ただし、その際には内容に応じて労働契約書や就業規則、給与明細書、タイムカードなどの証拠提出が求められます。
会社都合退職にできる可能性があるケース
・事業所の移転により、通勤が困難になった(自宅-会社の通勤時間が往復4時間以上)
・給与・待遇、労働時間、業務内容などの労働条件が契約内容と異なる
・給与支払いの遅延・滞納・未払い
・給与の減額(従来の給与額の85%未満に減額された場合)
・毎月の残業時間が45時間以上に達し、その状態が3カ月以上続いた
・仕事内容の変更(技術職で入社したにもかかわらず販売職への異動を命じられたなど)
・更新前提だった雇用契約が更新されない
・セクハラ、パワハラ、いじめ、嫌がらせの被害を受けた
・会社都合で休職命令を受け、休職が3カ月以上続いた
・会社が法令違反を犯した
いずれかに当てはまり、会社都合退職に変えたい場合は、ぜひハローワークに相談してみましょう。
まとめ
モラハラやパワハラを受けた、契約締結時とは異なる給与や労働をさせられているなど、自分には非がなくやむを得ず会社を退職する場合、
自己都合退職よりも会社都合退職のほうが失業手当が多くもらえるため、そちらをおすすめします。
解説OLちゃんは実際に経験しているので、会社都合退職にするかはとても迷いました…。
会社都合退職を望んでいるのに自己都合退職にされそうな場合は、自分の意思をはっきりと会社側に伝えることが大切です。
伝えるときは緊張しますが、自己都合退職とは失業手当の金額ももらえる期間も大きく変わってきますので、
もらえるものはもらって、堂々と会社から身を引きましょう!
さいごに、今回の記事のまとめです。
①会社都合退職と自己都合退職の違い
- 会社都合退職とは、経営不振やリストラ、倒産など会社側に退職の原因があること
また、会社側に明らか問題や欠点がある場合は、会社都合退職にできる - 自己都合退職とは、転職や結婚、転居などを理由に、労働者側の意思で退職すること
②会社都合退職のメリット
- 失業給付金が自己都合よりも3カ月早く支給され、給付日数も長い
- 解雇の場合、会社から最大30日分の給与に相当する解雇予告手当を受け取れる
③会社都合退職のデメリット
- 転職時に面接官にマイナスな印象を与える可能性がある
④会社都合に該当する正当な退職理由
- 倒産、大量離職、事業所廃止、解雇、退職勧奨など
- 自己都合で退職しても、ハローワークで会社都合だと認められるケースがある