新型コロナウイルスの世界での感染者数が数万人、死者数千人を超え、世界だけでなく日本でも影響が出ています。
新型肺炎には特効薬がないため、治療は痛みや息苦しさを和らげる対症療法が中心になりますが、重症の場合は人工呼吸器が必要になることもあります。
中国で報告されている重症例の多くは、「高齢者、糖尿病や高血圧などの持病がある人」であるとされていますが、重症の肺炎や呼吸困難になる人は2割程度と少ないです。
クルーズ船で重症と判明した4人も60代1人、70代3人で、いずれも持病があるという。
では一体なぜ、糖尿病や高血圧の方は、新型コロナウイルスによる死亡のリスクが上がってしまうのでしょうか?
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糖尿病は肺炎になりやすい?

糖尿病を患っている人は患っていない人に比べて、約1.75倍も肺炎に罹りやすいという報告があります。
日本で調査された糖尿病の合併症としての感染症は、このような順番でした。
- 肺炎(呼吸器感染症):41%
- 尿路感染症:24%
- 皮膚軟部組織感染症:17%
のどや気管支・肺は、常に外界に面しているので、ウイルスや細菌から暴露されやすい環境です。
通常は「細胞や粘膜のバリア、咳反射」で防御されていますが、糖尿病では、防御力が落ちているため、感染しやすい状態とも言えます。
新型コロナウイルスのはまだ、有効なワクチンが開発されていないため、通常の予防策と共に血糖コントロールが重要です。
放置されている糖尿病
日本における糖尿病の総患者数(医療機関で治療を受けている人)は329万人(平成29年)です。
糖尿病が強く疑われる人は約1000万人いるので、正しい治療を受けていない人が多数いるのが現状です。
糖尿病は、発症のメカニズムで2種類に分けられます。
- 1型糖尿病
…遺伝が関与され若い頃から発症する - 2型糖尿病
…肥満や飲酒など生活習慣が関わる
(90%以上が2型糖尿病)
糖尿病の初期は目立った自覚症状がないことが多く、気付かず放置されることが少なくありません。
「血糖値が高い、尿に糖が出るから怖い」と思いがちですが、糖尿病の怖さは、感染症など様々な合併症を引き起こすことです。
糖尿病と感染の関係について
糖尿病の方が手術を受ける場合、「血糖値のコントロール」が非常に重要です。
大きな手術で執刀する外科医は、事前に糖尿病専門の医師への相談や診察依頼をします。「手術できる血糖コントロール」が出来ないと手術が中止されることもあります。
糖尿病があると、手術をした場所の傷が治りにくく、感染症リスクも高くなるので、注意が必要なのです。
血糖値が上がる
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免疫力が低下 (血糖値が高いと白血球の働きが低下して免疫力が低下する)
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重症化(血液の巡りが悪くなり、酸素や栄養が行き渡らない)
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血糖値が上がる
糖尿病は、免疫力の低下、動脈硬化など血液の流れの悪化などから、カラダがウイルイスや細菌などからの攻撃に対する防御力が落ちやすいので、感染症に注意が必要ということです。
喘息などの呼吸器疾患がある場合

気管支喘息は重症化のリスク因子となるのか?
気管支喘息患者において、ダニなどのアレルゲンの曝露、気候変動、ウイルス感染症は気管支喘息増悪(発作)のリスク因子であることが知られています。
コロナウイルスでも感冒症状を引き起こすこと、また新型コロナウイルス感染症では肺炎を生じていることから、気管支喘息患者が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合も喘息増悪をきたし、それに伴って呼吸不全が重症化する危険性が考えられます。
気管支喘息持ちはどのような対応が必要か?
気管支喘息の病態は、好酸球を主体とした気道の慢性炎症です。
この気道炎症によって、気道平滑筋の収縮、気道の浮腫、気道分泌亢進等により気流制限を生じています。
そのため、気道炎症が存在する状態でウイルス感染による気管支炎が生じると、重症化するリスクが高いと考えられます。
従って、気管支喘息患者では気道炎症を抑えるために、吸入ステロイド薬等の長期管理薬による日頃からのコントロールが重要です。
気管支喘息持ちが新型コロナウイルスに感染するとどのように治療されるのか?
一般的なウイルス感染症による気管支喘息の急性増悪(発作)時では、通常の発作時治療に準じて治療をしています。
喘息治療の差し控えは喘息発作およびその重症化をきたす危険性が高いため、新型コロナウイルス感染症の罹患時も、通常の安定期・発作時の喘息の治療に準じて治療を行うべきであると考えられてます。
出典:一般社団法人日本アレルギー学会