派遣薬剤師の時給相場は、都心部の場合2,200~3,300円とパートよりも高く稼ぐことができ、時間の都合も融通がきくことが大きなメリットです。
下記のような人は派遣薬剤師で働くメリットがあると言えるでしょう。
- 働く時間に制限がある
- プライベートを充実させたい
- 時短でお金を稼ぎたい
派遣薬剤師は魅力的な働き方ですが、人によって向き不向きがあります。
例えば、「同じ職場で働きたい人」「キャリアアップを目指している人」「患者との関係を築いていきたい人」には、派遣という働き方は向いていません。
この記事では、「派遣薬剤師のメリット・デメリット」、また、「派遣薬剤師という働き方が向いている人と向いていない人」についてご紹介します。
1.派遣薬剤師の一番の魅力は「高時給」
「派遣薬剤師は高時給」というイメージはあるものの、具体的な時給や年収などはなかなか見えにくいものです。
そこで、派遣薬剤師として働くと実際にどれくらいの収入を得ることができるのか、具体的な数字をみていきましょう。
1-1.薬剤師の平均年収は?

平成28年の賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は533万円となっています。
ただ、これはあくまで全体の平均年収で、当然男女や年齢によって年収は変わってきます。また薬剤師の給与は地域差が大きいという特徴があります。
1-2.薬剤師は地方のほうが稼げる?
薬剤師の収入は、住んでいる地域によっても大きな差が出ることをご存知でしょうか?
一般的な職業では東京や大阪など都市部の給料が高くなりますが、薬剤師の場合は逆です。地方は薬剤師不足に苦しんでおり、高給を提示して人材を確保しています。
それは正社員のみならず派遣も同様で、時給相場は以下の通りです。
〇地域別にみた薬剤師の時給相場
都市部 | 2,200~3,300円 |
地方都市 | 2,300~3,600円 |
地方の都市部以外 | 3,000~4,500円 |
薬剤師の時給は、都市部でも十分に高い時給ですが、地方で働くとさらに高い時給で働くことができます。
2.派遣薬剤師のメリットは?

ここでは、派遣薬剤師として働くことのメリットをご紹介します。
メリット①柔軟な働き方&残業ゼロ
派遣薬剤師のメリットは時給が高いことだけではありません。「残業なしで、自分が決めた時間だけ仕事する」という柔軟な働き方ができるのです。
場合によっては、退勤時間になっても患者が途切れず残業を依頼されることもあるかもしれません。受けるかは自由ですが、もし残業をした場合でも残業代がしっかり支給されます。
ですが実際は、遣薬剤師は時給が高く、経営側としてはあまり残業をさせたがりません。残業が多い場合は、派遣会社に相談しましょう。
メリット②女性薬剤師が働きやすい
派遣はあらゆるライフスタイルにも柔軟に対応でき、プライベートを圧迫することがありません。
特に、家庭と両立して働くママ薬剤師にとっては、曜日や時間が選択でき、残業なしで働けるのは大きなメリットだと言えます。
メリット③福利厚生がしっかりしている
「派遣薬剤師には福利厚生がない」と思っている方もいるかもしれませんが、これは誤解です。
派遣薬剤師は派遣先の会社ではなく派遣会社と雇用契約を結んで働きます。つまり、福利厚生に関しても派遣会社の制度が適用されるのです。
最近の派遣会社は福利厚生面が充実しており、質の高い福利厚生を受けられます。社会保険も整備され、有休はもちろん、育休・産休も取ることができます。
3.派遣薬剤師のデメリットは?
高時給なだけでなく福利厚生もしっかりしており、ライフスタイルに合わせた働き方ができる派遣薬剤師ですが、デメリットもいくつか存在します。
ここでは、派遣薬剤師のデメリットについて説明していきます。
デメリット①忙しい職場が多い
企業側が派遣を募集する理由は、大きく2つあります。
- 患者の数が多く、人手が欲しいケース
- 欠員分の募集をするケース
人手が欲しいケース
当然、患者の数が多ければ仕事も忙しくなりがちになります。
また、患者数だけでなく、診療科によっても忙しさは異なります。
基幹病院の門前薬局で調剤の大変な処方が多い薬局であったり、一包化の多い薬局などでは、正社員は調剤だけで精一杯になってしまい、派遣はとにかく服薬指導を朝から晩まで続けなければならない、といったケースもあります。
欠員が出た場合の募集
薬局では、1日の受付処方せん枚数に応じて薬剤師の人数が定められています。そのため、店舗の忙しさに関係なく、薬剤師の欠員が出たら補填をしなければならないのです。
事前に職場の平均処方せん枚数や診療科、薬剤師の人数などから忙しさはある程度予想できるかと思いますが、派遣薬剤師として募集している職場には忙しいところが多いことは覚悟しておいた方がよいかもしれません。
デメリット②キャリアアップが難しい
キャリアアップを目指している人には派遣は難しい働き方となります。
そもそも、薬剤師は仕事の中で目に見える成果をあげるのが難しいため、評価のしづらい職業といえます。
その中で、正社員ではどれだけ長く働いたかという「勤続年数」と、それに伴う「経験」「スキル」を評価されてキャリアアップをしていくケースがほとんどです。
しかし、派遣薬剤師は最長3年という期間の制限があり、一つの職場で働き続けることができません。そのため、正社員と同じような評価を求めるのは難しく、また派遣では管理職へ昇進するようなケースはほとんどありません。
デメリット③患者と関係を築けない
薬剤師の仕事は、患者さんと密に接することで信頼関係を構築して、健康を支えることができるというというのが本来のあり方です。
薬のことやその他健康に関することを気軽に相談してくれるようになると、薬剤師として認めてもらったんだと思えるようになりますし、そんな患者さんのために健康を総合的にサポートすることができるというのは、非常にやりがいのある仕事だといえます。
しかし、派遣薬剤師で働いていると数ヶ月単位で職場を変わらなければならないことが多く、患者さんと長期的な関係構築をすることができません。
関係性ができていないと、患者さんへの対応も流れ作業のように淡々とこなすようになってしまいがちで、やりがいを見出すのも難しくなってしまいます。
かかりつけ薬剤師になれない?
2016年4月からかかりつけ薬剤師制度がスタートし、薬剤師はかかりつけとして患者さんと長期間接して健康をサポートしていくことが求められています。
- 薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があること
- 同じ薬局に1年以上在籍していること
かかりつけ薬剤師になるには上記の条件があり、派遣薬剤師がなるには難しい条件となっています。
かかりつけ薬剤師として地域に根ざした医療に貢献していきたいと考えているのなら、派遣という働き方は向いていないといえます。
デメリット④派遣薬剤師への風当たりが強い職場もある
派遣薬剤師として様々な職場で働いていると、中には派遣に対する風当たりの強い職場に当たってしまうこともあります。
派遣薬剤師は、派遣先と雇用契約を結ぶのではなく、派遣会社と結んでいます。
そのため、職場の人たちからは「同僚」として見られず、「派遣されてきた余所者」としてみられてしまうこともあります。
また、派遣の時給が高いのも周囲からの当たりが強くなる一因になることがあります。
これまで見てきたように、派遣薬剤師は時給が良いなどのメリットがある反面、デメリットに感じられるところも少なくありません。
職場環境の問題は、派遣先を決める際にコンサルタントにしっかり相談しておくことで、トラブルを事前に防ぐことができます。
派遣会社は求人先の職場の内部事情にも詳しく調べ上げています。こちらが「忙しい職場では働きたくない」「派遣への風当たりが強くない職場が良い」と条件を伝えておけば、コンサルタントは条件に見合った派遣先をしっかりと紹介してくれます。職場の雰囲気まで事前に理解しておくことができれば、安心して働くことができますね。
派遣薬剤師に向いている人・向いていない人
ここまで紹介したように、派遣はメリットが多い魅力的な働き方です。しかし仕事へのスタンスや考え方によっては向いていない薬剤師もいます。
もし、あなたが以下で紹介する「派遣を選んではいけない人」に該当するなら、正社員やパートなど他の働き方をおすすめします。
派遣薬剤師に向いていない人

- 企業内でのキャリアアップを希望している
- マネジメントをやりたい
- ずっと同じ職場で働きたい
企業内でのキャリアアップを希望している
派遣は様々な職場を体験できるのでスキルアップはできますが、出世やキャリアアップはできません。もし今のうちから「将来は管理職になりたい」「管理薬剤師になりたい」といったキャリアビジョンがあるのなら、はじめから正社員として働きましょう。
マネジメントをしたい
派遣薬剤師がまかされる仕事は、簡単なピッキングや服薬指導がほとんどです。店舗運営や人材育成などは正社員が担当し、派遣薬剤師にまかされることはほぼありません。管理職やマネジメントに関心がある方は、派遣を断念して正社員で働くべきです。
ずっと同じ職場で働きたい方
派遣は、契約期間が切れるごとに新しい職場で働くことになります。扱う薬も変わりますし、職場独自のルールも変わるでしょう。それらにストレスを感じるなら、正社員もしくはパートで働くべきです。
派遣薬剤師に向いている人

- ママ薬剤師なので働ける日時などに制限がある
- プライベートを充実させたい
- お金を稼ぎたい
- 多くの職場を経験して、独立開業などを考えている
ママ薬剤師なので働ける日時などに制限がある
これは派遣のメリットを最大に享受できるシーンです。子育てだけでなく、家庭を重視したい、親の介護をしたい、という薬剤師にとって時間に融通のきく働き方は魅力的ですよね。しかも薬剤師なら一般職とは比較にならないほどの高給を約束されているのです。
プライベートを充実させたい
派遣は「仕事よりも趣味を充実させたい」という薬剤師にも向いています。しっかり働きしっかり遊ぶ、というぜいたくな働き方ができるのです。これも薬剤師が売り手市場で、時給が高いからできる働き方です。
お金を稼ぎたい
派遣は高時給で働けるので「とにかくお金を稼ぎたい!」という薬剤師に向いています。上の項目では週5日8時間勤務で計算しましたが、どうしてもお金がほしいのなら勤務時間を増やしたり、残業を積極的にこなすことも視野に入れましょう。
多くの職場を経験して、独立開業などを考えている
派遣は契約が終了すれば次の職場に移ることになります。これはデメリットとして紹介しましたが、「様々な職場を見ておきたい」と考える薬剤師にとってはむしろメリットといえます。独立開業を目指している場合なども有意義な勉強ができるはずです。
どの働き方が自分にもっとも向いているのか、派遣だけでなく、正社員やパートも含めてもう一度良く考えてみましょう。