薬局や病院、ドラッグストア、製薬会社など、様々な場所で活躍する薬剤師ですが、職場では狭い人間関係や会社の規模、人手不足などが理由でブラック薬局は少なからず存在しています。
もし現在の職場や転職した先がブラック薬局だったとしたら、精神的にも身体的にも病んでしまう可能性もあるので注意が必要です。
そこで、今回は薬剤師として間違った転職先選びで失敗することがないように、ブラック薬局の見分け方についてご紹介します。
1.ブラック薬局の特長
ブラック薬局に多い特長を紹介します。
いくつか当てはまるものがあったら、あなたの職場は「ブラック薬局」かもしれません。
ブラック薬局チェック
- 人間関係が複雑、イジメやパワハラなどが行われている
- 残業が多い、残業代が出ない
- 離職率が異常に高い
- 忙しすぎて休憩や有給休暇が取れない
- 教育制度がない
- 調剤報酬を不正に請求している
それでは、ブラック薬局に当てはまるそれぞれのポイントを見ていきましょう。
1-1.人間関係が悪く、いじめやパワハラがある
人間関係に全く問題がなく「100%健全である薬剤師の職場」というのは、実際のところ少ないかもしれません。
とはいえ、仕事に大きな支障を来すことなく、通常の薬剤師業務を行える職場が理想的ですよね。
しかし、ブラック薬局では人間関係が複雑であったり、とても影響力の強い立場の人が職場の雰囲気を悪くしていたり、さらには最近問題となっているいじめやパワハラが横行していることもあります。
小さな世界で状況を変えようと努力をせず、意見をいえないような風通しの悪い環境もブラック薬局となる要因といえるでしょう。
1-2.残業が当たり前、残業代が支払われない
ブラック薬局かどうかの判断基準の一つとして、残業の長さ・労働時間の長さは外せないポイントです。
残業が多すぎるのは、非効率的な職場であることだけではなく、残業代を請求できないように上司や会社から圧迫されている可能性があるため、注意が必要です。
特に、薬局の場合は近隣の病院が終わるまで閉店することができず、受け身の状態になってしまうことも少なくありません。
決められた就業時間を超えて残業することが定常的になっている場合も多く見られます。スタッフ不足で残業を絶対に断れない、サービス残業が当たり前という雰囲気があればブラック薬局といえるでしょう。
1-3. 離職率が高く、スタッフの入れ替わりが多い
「働きにくい薬局」「仕事が忙しすぎる薬局」「人間関係が複雑である薬局」、こういったネガティブな要素を持っている薬局では、薬剤師が定着しないので離職率が高くなります。
また、業務が多いにも関わらず給与が低い、福利厚生が充実していないなど待遇面が悪い場合は薬剤師が離職しやすい傾向にあります。
頻繁に薬剤師が入れ替わって長く働いている人が少ない場合はブラック薬局である可能性が高いでしょう。
1-4.休憩や有給休暇が取れない
ある程度の忙しさは仕方のないことですが、それでもスタッフを揃えたり勤務体制を整えたりすることが会社の役目です。
一人薬剤師で薬局が常に開店しているため休憩をまともに取れない、忙しくて調剤室から抜けられない、人員不足で週休などの休日も返上で出勤を求められる…など。
休みを十分に取れないような薬局は完全にブラック薬局といえます。
1-5. 研修補助や教育制度が整っていない
ブラック薬局の特徴として、研修補助や教育制度などバックアップする体制が整っていない場合も多くみられます。
社長や上層部の意向で、薬剤師の研修補助は余計な出費として見なされている、研修に行く時間があれば実務をこなして欲しい…。
などといった考えが浸透している薬局では薬剤師として成長することが難しく、ひいてはブラック薬局化につながる恐れがあります。
2.大手薬局と中小薬局、どちらがブラック?

薬局を選ぶ時に大手薬局と中小薬局ではどう違うのかも気になりますよね。
厚生労働省の資料によると、全国の薬局数は約5万8,000店舗(平成28年度)。コンビニがおよそ5万5,000店舗(平成28年度)なので、歩けばすぐに薬局が見つかるような状況です。
そんな多くの薬局を支えているのが、全国に約28万8,000人いる薬剤師たち。このうち56%にあたる約16万1,000名もの薬剤師が薬局に勤務(平成28年度)しています。
きっと多くの薬剤師が、大手と中小で何が違うのか、どちらがブラックなのかということについて気になっていることでしょう。
そこでまず大手薬局と中・小規模の薬局の良いところ・悪いところから見ていき、どちらがブラックなのかについて考えてみましょう。
2-1.大手薬局のメリット
1.教育体制が整っている
2.福利厚生が充実している
3.収益が安定している
〇教育体制が整っている
基本的な研修はもちろん、日々状況が変わる業界事情にもついていけるよう研修システムを用意しているところが多いのが特徴です。
また、資格取得をサポートする制度など、スキルアップを希望する方をバックアップする体制も整っています。
〇福利厚生が充実している
経営母体によっては出産・育児をサポートする制度や、家賃補助制度、財形貯蓄制度などを用意している企業もあり、金銭面での補助はあるのとないのとでは大違いですよね。
結婚や出産など、いろいろなライフイベントを重ねていくうえでも心強いのが大手の強みです。
〇収益が安定している
全国展開している薬局は多くの店舗でリスクを分担しています。
そのため、業績の良し悪しによって収益が大きく変わるといったことはあまりありません。
2-2.大手薬局のデメリット
1.転勤がある、転勤が多い
2.調剤以外の仕事が多い
〇転勤がある・多い
各地に展開している薬局であれば、転勤を命じられる場合もあります。
特に家族がいる人や、これから結婚を考えている人にとってはデメリットとなりえるかもしれません。
〇調剤以外の仕事が多い
小・中規模の薬局であれば調剤業務だけをしていれば済むところが、大手調剤薬局になるとそれ以外の事務仕事が発生します。
調剤以外の仕事が多く、残業なしには仕事が終わらない状況もあるようです。
2-3.中・小薬局のメリット
1.地域に密着した薬剤師本来の仕事ができる
2.経営者と近い距離で仕事ができる
〇地域に密着した薬剤師本来の仕事ができる
規模の小さい薬局は患者さんとの距離が近いのが特徴。患者さんから頼られることも多く、信頼関係も築きやすいです。
また、大手に比べると個人に与えられる裁量が多く、やりがいをもって働くことができます。
〇経営者と近い距離で仕事ができる
社長や店長と近い距離で仕事ができるため、意思疎通がスムーズです。
大手特有の「本社は何を考えているの?現場と意思疎通が図れていない…」といったことも発生しづらいでしょう。
2-4.中・小薬局のデメリット
1.個人責任が大きい
2.人間関係に悩むケースが多い
〇個人の責任が大きい
裁量が大きいということは「個人にのしかかる責任が大きい」ということです。
大手に比べると、自ら率先して動き、判断しなければならない場面も多いでしょう。
〇人間関係に悩むケースが多い
比較的小さい薬局の場合、少ない人数のスタッフと密に関わっていかなければなりません。
たとえ性格が合わない相手であっても、狭い空間の中で業務を行わなければならないのです。
限られた中での人間関係に耐えられない結果、転職を選択する人は多くいます。
【結論】大手にも中小にもブラック薬局は存在する
一般企業の場合、大手であるほど給与水準は高く、労働条件の整備も進んでいるのが一般的です。
しかし、調剤薬局の場合は逆の傾向が強いといわれています。
なぜなら、中小規模の薬局は簡単に退職者の代わりを用意できないため、調剤経験のある良い人材には長く勤めてほしいと思っているからです。
勤務者を長くとどめさせるためにも、給与や待遇面を良い条件にし、囲い込んでいるともいえるでしょう。
一概に大手だからここが悪い、中小だからここが悪いとも言い切れないため、自分で見極めていくことが大切です。
3.ブラック薬局にいるなら迷わず転職

「転職する勇気もないし、がんばるしかないのかな…」と、ストレスの多い職場で迷いを抱えたまま働いている方もいるかもしれません。
しかし、実は薬剤師の7~8割が1度は転職を経験しています。
薬剤師に限らず、昔と違って1社で定年まで勤めあげるという人はほとんどいません。
また、一般的には転職回数が増えるにつれて転職しづらくなるといわれていますが、医療業界の中でも薬剤師に限っては特別。
多くの職場が人材不足に悩まされているので、転職活動において離職経験がマイナスとなることはほとんどないのです。
もし、今の勤め先で心身を崩して無理に働いているようなら、すぐにでも転職することをおすすめします。