結婚や子育てなどを理由に仕事から長期間離れており、復職したくても不安を抱えるブランク薬剤師。
「復帰したところで仕事についていけるのか?」「知識が足りているか不安…」「家事と両立できるか心配…」など、薬剤師という仕事に復職することに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
この記事では、ブランクはあるけれど復職したい方のために、復職しやすいポイントをご紹介します。
1.薬剤師業界は何年からがブランク?

ブランクがある薬剤師は、どれくらいの期間離職しているのでしょうか?
3年以上の離職が70%!
年間が10%、2年間が20%、3年以上が70%という回答が得られました。復職までに3年以上のブランクを持つ薬剤師が圧倒的に多いのです。
2~3年のブランクを経験した薬剤師の傾向としては、女性が出産や子育てを理由に休職・退職し、子供が2、3歳になって少し余裕が出たため復帰するケースが多いようです。
この「ブランク年数」は復職を考えるうえで非常に大事で、1~2年のブランクであれば、まだ現役時代の知識が残っているので復帰したとしてもそれほど苦労しないはずです。
一方で、3年以上のブランクがあると復帰のハードルは上がってしまいます。
ここから、苦労するポイント等を具体的に紹介していきます。
2.ブランクが3年以上ある薬剤師が苦労するポイント

2-1.現役時代の知識を忘れている
3年以上ブランクがあると、現役時代に覚えていた知識はかなり忘れてしまいます。
薬の名前に聞き覚えはあっても、その薬にはどのような副作用があって、どんな点に注意が必要かなど、細かな点までは抜けてしまうものです。
まったく仕事にならないということはありませんが、業務に支障が出るのは間違いありません。ある程度は復職前から勉強し直した方が良いでしょう。
また就職してすぐ仕事から離れてしまったなど、ブランク前の実務経験が少ない薬剤師はさらにハードルが上がります。
さまざまな知識を初めから覚え直さなければならないと考えた方が良さそうです。
2-2.ブランク中に登場した新薬を学ぶ必要がある
日本では、毎年100前後の医薬品が新薬として承認されています。ブランクの期間が延びるにつれ新薬の数も増えるので、これを一気に覚えるのは大変なことです。
新薬のすべてを覚える必要はありませんが、職場で採用されている薬については把握しておかなければなりません。
特に、これまでとは作用機序の異なる薬が新薬として発売された場合は、その違いもしっかり勉強しておく必要があります。
2-3.薬の用法用量を把握しなければならない
薬の用法用量が改訂となることはあまりありませんが、ブランクが空くとどうしても忘れがちになってしまう項目です。
特に、疾患によって用法用量の異なる薬は間違えやすく、ブランクが3年以上ある場合は注意が必要です。
基本は処方箋に記載されていますので、それをもとに考えればよいのですが、まれに医師の勘違いなどで処方箋に記載ミスもあるので気は抜けません。もし見落としてしまえば患者の健康被害につながる危険性もあります。
2-4.法改定に追いつくのに苦労する
調剤報酬は2年に1回、偶数年に改定されていますが、改定内容によっては薬剤師の業務内容もがらりと変わります。
その極端な例としては、お薬手帳持参による患者負担の増減があります。2016年までは、患者はお薬手帳を持参すると負担金が高くなるため、お薬手帳を持参しない患者が多く、薬剤師からも声掛けしづらい状況でした。
しかし、2016年の調剤報酬改定で、お薬手帳を持参した患者は負担金が安くなるという、これまでとは真逆の改定となったのです(安くならない店舗もあります)。そのため、薬剤師も対応に苦労しました。
ほかにも、加算が取れる要件が変わることも多いため、ブランクがある薬剤師は、以前と今の調剤報酬がどのように違うのかを、しっかり把握しておく必要があるのです。
2-5.併用薬の改定
医薬品の中には併用禁忌・注意の項目が改訂によって追加されたり、削除されることもあります。そのため、併用禁忌や、併用注意の項目についても薬剤師としては覚えておかなければなりません。
知識がないと併用薬にまで意識が回らず、スルーしてしまう薬剤師もたまにいますが、特に併用禁忌の薬を見落としてしまうと大きな問題となります。
自分が働く職場で使われる薬の併用禁忌、併用注意の項目については把握しておかなければなりません。
このように3年以上ブランクが空いてしまうと、元々持っていた知識の復習だけでなく、新しい知識も広く身につけなればなりません。
働き始めのうちは負担も大きくなりますので、注意が必要です。
3.ブランク薬剤師におすすめの勉強法3選

ブランクのある薬剤師の場合、これまでの知識を忘れてしまうというよりも、新しいことをキャッチアップするのが難しいと感じる方が多いようです。
ここでは、復職を決めた方が効率よく勉強するための方法を3つご紹介します。
3-1.インターネット、本を活用する
インターネットや本で情報を集めることは、仕事を休んでいる間から取り組むことができる手軽な方法です。
薬剤日報、日経DIなど薬剤師向けの情報誌を日々チェックすることでブランク明けにも新しい知識に戸惑うことなく業務に取り組めます。
移動時間や夜寝る前など隙間時間での勉強をおすすめします。
3-2.復職支援プログラムを使う
公益財団法人の日本薬剤師研修センターや一般社団法人の女性薬剤師会などは薬剤師の教育や研修を行っています。
講演会のほかにビデオ研修やe-ラーニングなどが受けられます。
独学ではなく講師と一緒に勉強することで知識や自信を取り戻せます。
3-3.研修制度がある転職先を選ぶ
求人サイトで「研修あり」という職場に転職することができれば、働きながら研修を受けたり勉強会に参加することができるため、ブランクを埋めるために必要な研修を受けることができます。
気を付けたいのが、すべての企業に研修制度があるわけではなく、「研修あり」と記載してあっても簡単な説明だけの研修もあれば、3か月程度のじっくりと研修を行う企業があるということ。
職場の研修制度を利用したいと考えている場合には自分で判断せずに、一度転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。
4.ブランク薬剤師が働きやすい職場の特長

ブランクを解消する勉強を頑張っても、職場選びに失敗してしまったら元も子もありません。
ここでは、ブランク薬剤師が働きやすい職場の特徴をご紹介します。
4-1.以前勤めていた職場と同じ分野、業種
まずは、復職する職場の分野、業種について考えてみましょう。
ドラッグストアから調剤薬局など、ブランク前と異なる職場で働くとなるとこれまでの経験が活かせません。
ブランク明けの薬剤師は同じ職場に復職することをおすすめします。
さらに、以前働いていた職場が内科の門前薬局であれば復職先も内科を選ぶなど、診療科も同じ職場を選べば、よりスムーズに復職できるはずです。
4-2.パートから正社員になれる
「子供が小さいうちはパートで働きたい」「知識に不安があるうちは正社員よりパートで働きたい」といった理由で、復職のスタートにパートを選ぶ人は少なくありません。
しかし問題は、子育てがひと段落して、正社員としてバリバリ働きたいと思った時です。
同じ職場で正社員に雇用形態をチェンジできたら良いですよね。そんな風土や制度が整っている職場を選んでおけば、ライフステージの変化に応じてベストな形で働けるでしょう。
4-3.大手調剤薬局、大病院など規模が大きい
大手がおすすめする主な理由は、「薬剤師の人数が多いこと」、そして「教育体制がしっかりしていること」です。
ブランク明けでは知識面でどうしても不安を感じてしまうもの。だからこそ時間をかけてわからないところを教えてもらえる方が安心できますよね。
しかし、人が足りていない中小の薬局などでは、日々の業務で手一杯でゆっくり教えてもらえず、そもそもマニュアルがないということが起きてしまいます。
その点、大手調剤薬局や大病院では薬剤師の数も多く、ブランク明けの薬剤師を受け入れた経験も豊富です。復職に不安が残る薬剤師にとっては最高の環境といえるでしょう。
4-4.処方内容がシンプルな環境
処方内容がシンプルな薬局なら、覚える薬の種類も少なくて済みますし、患者さんから突っ込んだ質問をされることもあまりないでしょう。
薬剤師としての基本的な業務が多いため、ブランク明けの薬剤師のウォーミングアップとしても働きやすい職場といえるでしょう。
調剤薬局の処方内容は、門前の病院の診療科によって変わります。眼科や皮膚科、整形外科などの門前薬局がおすすめです。
これらの薬局では処方の内容がシンプルなケースが多いため、薬の種類も多くありません。さらに外用薬が大半で、錠剤や粉薬などの内包薬がほとんどないため、負担も減らせます。
逆に、内科や総合病院前の薬局では薬の種類も多く、一方化など手間のかかる業務が多い傾向にあります。ブランク明けで知識に自信のない人にはあまりおすすめしません。
4-5.ママ薬剤師が実際に働いている
子育てが一段落し、復職を考えている薬剤師にとっては、ママ薬剤師が実際に働いているかどうかも、働きやすさを測るバロメーターになります。
ママ薬剤師を積極的に受け入れている職場では、職場全体としてママ薬剤師に理解が深いという特徴があります。たとえば子どもが熱を出した際の急な早退や休みに対しても、寛容なはずです。
また、ママ同士で子育ての苦労を共有できるため、あまりストレスを感じずに職場復帰を果たせるでしょう。